2 ゲート場の犬たち

なげきの日々が続いたある日、 いなかのばあちゃんから電話がかかった。

明日から村に遊びに来い だとさ。明日から学校は夏休みなのだ。

ウィンキーのことが気がかりで返事をしぶっていると、ばあちゃんは

「最近、ヒデの犬をうちの村でちょくちょく見かけるんじゃよ」

と言いだした。

うそだろ、と思ってよく話をきいてみると

「本当だとも。 最近、うちの村にはやたらと犬が歩きまわっていてねえ。 近所のゲート場がたまり場になっておるんじゃ。そこで、何て名前だったか?ウィンナだったっけ?」

「ウィンキーだよ。ばあちゃん」

「そうそう、ウィンキらしいのが一匹まじっていたんじゃ」

「名前をよんでみた?」

「ああ、よんだが、何の返事もせんだった」

「何てよんだの?」

「おーい、ワンコ。イモやるからこっちこい、って」

「イモなんか食うわけないだろ、ばあちゃん」

その犬がウィンキーかどうかうたがわしいが、村へ行かない手はない。

ぼくは明日から遊びに行くと返事をした。

ばあちゃんちは同じ県だが、ぼくの家から遠くはなれた山里にある。

母さんは、行ってもいいと言ってくれた。

ばあちゃんのいっていた「ゲート場」というのは、ゲートボール場のことで、ばあちゃんの家から田んぼを四つくらいはなれた原っばにあった。

そこには五つの長いベンチと、七つのバラック小屋があって、何百びきもの犬がうじゃうじゃいた。

犬たちの何びきかはぼくを見てほえた。

どの犬も太っていて首輪がついていた。

ウィンキーのすがたはなかった。


こんなにたくさんの飼い犬がどうしてこんなへんぴな山里にきているんだろう。

ぼくはふしぎに思った。

むかしここに来たときには、ベンチはあったけれども小屋なんてなかった。

「変なやつが住みついとるぞ」とばあちゃんは言ってた。

ぼくは小屋に近づき、そっと中をのぞいてみた。

小屋の中にセメント袋みたいな大きな袋が山積みになっているのが目に入った。

その奥は、たくさんのパソコンや工作機械が並んでいた。

中に入ったが人の姿は無い。

小屋の真ん中にテーブルが置かれていて、そのテーブルの上に、ただいま近所を巡回中という、書置きが残されていた。

どうやら、ここの住人たちは、この付近を歩き回っているようだ。

しかたなく小屋を出て、ゲート場を見渡した。

犬たちが、互いにじゃれあったり、けんかしたり、ねそべって大きなあくびをしたり、気ままそうに過ごしていた。

でも、なぜここ集まっているのか、まったくわからないままだった。

もう一度注意ぶかく犬たちを観察したが、結局ウィンキーは見つからなかった。

僕はかなりがっかりした。

 

つづく

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